2019年07月21日

列王紀下

列王紀下

「権能者の無力を暴露する神言の威力」 

@権能者の無力を暴露する神言(列王紀下1-17章)

列王紀下は、南北に分裂した両王朝の衰亡期の歴史を、列王、すなわち「権能者」と、神の人、すなわち「預言者」との交渉にしぼって記述しています。

危機に際して、権能者の無力が暴露される一方で、神の言葉の威力の代行者である預言者の奇蹟との対照で書かれています。

イスラエルの神ではなく、バアルの助けを求めたサマリヤの王アハジヤが、「エリヤが言った主の言葉のとおりに死んだ」という預言者の言葉の成就の記事にはじまる列王紀は、次から次へと、神の言葉が、何の世俗的権能もない神の人である預言者を通して、奇蹟的な出来事となったかを紹介してゆきます( 列王紀下 1:17、2:14、2:22、2:24、3:15、3:20、4:1以下、4:17、4:44、10:10等)。

スリヤ王の軍勢の長ナアマンが、その重い皮膚病を、預言者エリシャの言葉を信じるようになって、初めていやされたことについては、
「そこでナアマンは下って行って、神の人の言葉のように七たびヨルダンに身を浸すと、その肉がもとにかえって幼な子の肉のようになり、清くなった」( 列王紀下 5章、特に5:14)
と記されています。

この記事は、重い皮膚病の治癒が、エリシャの手を通さず、ただ「神の言」への信仰を、相手に、奇蹟のおこる条件として求めている代表的な記述として注目させます。

アハブ王およびその妃となったイゼベルは、預言者たちの血を流させた代表的な首脳者ですが、彼らの悲劇的な結末を指摘することにより、「義人たちの流された血の、隠れた報復者である主」を、その列王の歴史が証しすることを力説しています( 列王紀下 9:7以下、9:26以下、9:36以下、10:10、10:17等)。

北朝の滅亡を招いた直接因として列王紀下は、
「ヤラベアムはイスラエルに、主に従うことをやめさせ、大きな罪を犯させた。
イスラエルの人々が、ヤラベアムのおこなったすべての罪をおこない続けて、それを離れなかったので、ついに主はそのしもべである預言者たちによって言われたように、イスラエルをみ前から除き去られた。
こうしてイスラエルは自分の国からアッスリヤに移されて今日に至っている」(列王紀下 17:21以下)
と解説されています。

A聖都陥落にも拘らず示された神言の威力(列王紀下18-25章)

南朝末期の描写に集中するこの部分は、預言者イザヤの指導の下に、偶像礼拝の撤去につとめたヒゼキヤ王や(列王紀下18-19章)、ヨシヤ王の契約の書発見の結果としての宗教的廓清(かくせい)もむなしく、南朝も北朝と同じように亡びる運命にあったことをのべています。

「けれども主はなおユダにむかって発せられた激しい大いなる怒りをやめられなかった。
これはマナセがもろもろの腹だたしい行いをもって主を怒らせたためである。
それゆえ主はいわれた、
『わたしはイスラエルを移したように、ユダをもわたしの目の前から移し、わたしが選んだこのエルサレムの町と、わたしの名をそこに置こうと言ったこの宮とを捨てるであろう』」(列王紀下 23:26以下)
と言われている通りです。

南王国の滅亡は、北王国のそれより、さらに暗黒な歴史的事件でした。

南王国は、北王国に下された主からの審判、そしてそれが何に対して下されたものであったかを、目撃してきたはずだからです。

その歴史的現実から学び、反省する能力さえ失ってしまう、人間のうなじのこわさを改めて思い知らされます。

列王紀下は、北王国の滅亡から約百年余を経て、南王国もバビロンの支配下(捕囚)におかれた出来事を記述していますが(列王紀下24:10-11、25:1以下)、「ユダの王エホヤキンが捕え移されて後三十七年の十二月二十七日」獄屋から解放され、バビロン王の特別な優遇に与ったという、いくぶん明るい記録をもって閉じています。

【参考】
バビロニア王が、南王国(ユダ王国)の首都エルサレムを攻略して、バビロンに捕囚したのは、最初は西暦前597年、次いで西暦前587年または586年、西暦前582年または581年の3回です。



王国としての選民史は、直接的な意味で、神言の威力をさし示す歴史ではないこと、むしろ、神言にそむき、審判を招いた、在るがままの頽落の一切にも拘らず、「神の言は必ず成る」という真理が、さし示されています。

神の人モーセが、「神の聖なること」をさし示す「否定媒介」として用いられたように、王国史もまた、「神の言は必ず成る」ということを、歴史的に実証する「否定媒介」として用いられた、ということです。


posted by 道川勇雄 at 14:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


< ▲トップページへ戻る >
ツイッター始めました。お気軽にフォロー・コメントどうぞ。(Twitter)